会長挨拶Greetings from the President
第70期会長就任にあたって

このたび、第70期という節目にシステム制御情報学会(ISCIE)の会長職を仰せつかりました。今から30年以上前にさかのぼりますが、私が教員になって初めていただいた賞がシステム制御情報学会奨励賞でした。当時のことは今でも鮮明に覚えていますが、その当時はまさかこうしてその学会の会長職を務めることになるとは全く想像できませんでした。私は学生時代からずっと名古屋の人間で、関西でキャリアを積んだことはありません。その意味では、私が会長職を務めるということは、それ自体がISCIEとして一つの転換点を迎えたことの証左とも言えます。
学会も数多くありますが、これからは淘汰が進んでいくと思われます。人口減少というわが国の情勢を鑑みたとき、ISCIEがどういった立ち位置でどこを目指すのか、真剣に考えなければなりません。残念ながら会員数は年々減少しており、下げ止まり感を見せつつも、以前と比べて規模や賑わいにおいて学会のプレゼンスは小さくなりつつあります。もちろん、これはISCIEに限った話ではなく、国内に拠点を置く多くの学会に共通して言える課題です。以下では、この課題に対処すべく、学会が進める各事業を通してISCIEの在り方を考えてみたいと思います。
まず、学会誌です。昔と違って、現在は情報過多の時代であり、学会誌を読むよりもインターネットで検索した方がより早く、しかもマルチメディアでより有益な情報を得られるケースも多くあります。では、学会誌の役割・価値はどこにあるのでしょう。少なくともこれまでのような静的な文章や図をベースとした解説記事のみでは不十分で、カラー化はもとよりマルチメディアを活用しながら、それでいて最先端の内容が組織化され、さらには専門外の人間にも興味を持ってもらえるようなコンテンツ作りが必要ではないでしょうか。学会誌は学会の顔ですが、そろそろ動的でインタラクティブな要素を取り込んでいく時期に来ていると思います。
論文誌はどうでしょうか。残念ながら和文中心の論文誌はWeb of Science等の論文データベースに登録されることはなく、結果としてIF(Impact Factor)の取得はほぼ不可能です。ISCIEの論文誌はあくまでも国内の読者向けとし、たとえば論文賞を受賞するような高い評価を得た論文のみ。学会のプレゼンスを高めるという趣旨のもと、その英訳版を別途出版する(できればIF取得につなげる)というような考え方はあるかもしれません。もちろん賛否両論あると思いますが、多様な読者層を意識したより柔軟なカテゴライズが必要だと思います。
講演会に目を向けたとき、ISCIEが主催するメイン講演会であるSCIはある一定数の参加者(500名弱)を毎年集めています。これは、インターネットやITが全盛の時代において、それでもやはり対面でプレゼンをし、情報交換をすることに価値が見いだされているからです。その根底にあるのは「人のつながり」が持つ価値であり、ここに学会の普遍的な役割があると思います。この普遍的な価値を大事にしつつ、一方で最先端のテーマがタイムリーに議論される場と機会を提供し続けることが重要だと言えます。
最後に講習会です。最近の傾向で間違いなく言えるのは、一方通行の講義ではなく、インタラクティブなハンズオン形式の方がより多くの参加者を集めるということです。知識の習得手段は学会が企画する講習会以外にも数多くありますが、ソフトやハードの使い方まで含めた体験・実践型のものはまだそれほど多くはありません(あったとしても非常に高額です)。特に先端の内容になればなるほどこの傾向は顕著で、ここに学会として果たすべき役割の一端が垣間見えます。さらには前述した学会誌とのセット企画も効果的かもしれません。
いろいろと書きましたが、ISCIEの現状の最大の課題は、企業会員の増強だと考えています。最近よく企業の方からフィジカルAI関係の人材を採用したいのだがどうすればよいか、という相談を受けます。また、国の施策では「AI for Science」と題した多額の研究資金が投入されようとしています。「システム・制御・情報」は、実は昨今のフィジカルAIを先取りしたドメインのはずであり、ようやくこの領域が再び脚光を浴びるチャンスが来たと言えます。
2年前に副会長に任命される前までは、(関西人ではない私にとって)どこか他人事のように考えてきました。2年間副会長職を務めさせていただいて、改めてISCIEが持つポテンシャルと重要性を感じています。ISCIEはこれからのフィジカルAIを引っ張っていく重要な学術団体の一つになり得ます。現実世界とデジタルの世界を接続するフィジカルAIはまさにISCIEの十八番であり、学会としてアカデミアと産業界のより強固な意思疎通の機会を提供できれば、ISCIEは再び大きく成長できると思います。このチャンスをしっかりと生かすべく、微力ながら精一杯務めますので、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。