会長挨拶

第67期会長就任にあたり

第67期会長 佐藤 宏介(大阪大学)

ソビエト連邦が世界初の人工衛星スプートニク1 号を打ち上げ、日本では最初の原子炉が臨界達成し、人類の科学技術が大きく進展した1957 年(昭和32)に、自動制御分野を担う専門学会として本会の前身である日本自動制御協会が設立されました。青函トンネルと瀬戸大橋が開通した1988 年(昭和63)にシステム制御情報学会と名称変更した後さらに35 年の歴史を経て、2016 年には一般社団法人として法人格を得、この5 月の総会で67 期を迎えました。この歴史ある学会の第67 期会長として選任され、生活向上の輪と科学技術の輪が両輪のように走り続けているという認識と、諸先輩の本会維持発展にかかる継続的なご努力に畏敬の念を新たにし、学会がその両者を繋げる靱性ある車軸としてこれからも繋ぎ続けてゆくことに強い責任を感じています。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

これまで本会が取り扱うシステム・制御・情報は、機器やインフラの中に組み込まれ専門家が使用することが多く、一般の方には見えにくいものでした。というよりは、一般ユーザには既存の形態を尊重してあえてシステム・制御・情報を隠そうとする思想だったかもしれません。しかしながら、現在新車を購入すれば、アクセル開度に介入し車間距離制御を支援する「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」や、ハンドル操作に回転トルクを与えレーン走行維持を支援する「LKA(レーン・キーピング・アシスト)」が標準装備で付属し、ドライバの操作入力に反して、安全というメタな規範に基づきシステム・制御・情報が上書きしていきます。ミリ波レーダやLiDAR などのセンサはフェンダ内に隠れて見えませんが、フロントガラス中央上部にあるカメラレンズに気付けば、システム・制御・情報のための眼の存在が理解できます。システム・制御・情報の発展と並行して、われわれ人間サイドもシステム・制御・情報の存在を理解し、その有益な使い方を体得してきています。機械翻訳は対象言語の多様さと高速性から2018 年頃に人類を超えたとされその利用はもはや日常となりましたが、昨今では新たに生成型AI も内部に感情的なものを持ちつつわれわれの日常に加わろうとしています。つまりこれからは専門家だけでなく、社会の過半の人々も非人類からの介入を認めざるを得ない時代に突入しているのです。その中で本会は、恒久のWell-Being を念願し、生活向上と科学技術の両輪への貢献を通して、システム・制御・情報分野において名誉ある地位を占めたいと願っています。

前会長の太田快人先生をはじめとする歴代会長は、本学会が教育普及活動を担う場であり、かつ人材交流の場であること、また構成員の多くが京阪神地区の機関に所属していることから、お互いに顔の見える組織を訴求し続けてこられました。第67期も、このお互いに顔が見える性質を一層充実させ、学会の面接性の特性を十分に生かせるよう継続する所存です。笑顔で挨拶できるこの規模感を活かして自由闊達に活動し、オンラインの性質をも活かして京阪神地区以外とも交流を拡充し、専門を超えて協働することで本会を発展させたく思います。3年以上にわたるコロナ禍を経て、この5月からは以前の生活様式に戻っていきます。第67 回システム制御情報学会研究発表講演会の形態も、実寸大で体温ある顔を互いに見ての誠意ある熱い討論を期待してコロナ前と同じ対面式としています。私自身も修士課程進学早々に井口征士第41 期会長と連名で執筆した技術紹介をきっかけに、論文執筆活動と若手研究者の端くれとして京阪神地区の先生方、研究者の方々、産業界の方々との交流活動を開始しました。とくに産業界の方々との交流は大学に在籍する人間にとってすべてが新鮮で、最新製品や生産設備、フレキシブルオートメーションの生の迫力を前にしての討論は、研究者の目となり血肉ともなりました。地理と時間を超えるオンラインコミュニケーションの強力さを否定するものではありませんが、引き続き本会の諸活動をリアルとオンライン

の特性に応じては適切に使い分けたく思っています。

この第67期には、1981 年に本学会も共催した第8 回世界会議から42 年ぶりに、IFAC 世界大会が横浜で開催されます。「Wa (Harmony)」を主題にエネルギー、環境、災害。パンデミック、SDGs 等の世界的重要課題の解決に向け今後の方向性を示すべく、システム科学技術による自動化や制御、最適化が論じられます。IFAC2023 を共催する本会の会員の皆様も、是非世界の研究者との討論を通して、われわれの社会のWell-Being への貢献者となられることを切に願っています。

本会が引き続き会員の皆様に愛されるよう、会員、理事会、事務局とで互いに顔が見えるよう密に連携したく思いますので、会員の皆様の積極的な交流をお願い申し上げます.

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